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キングコングinアールデコ

01
20
2011年

先日、映画チャンネルで「キング・コング」を再見しました。
「キングコング祭り」のようで新旧三本を見たのですが。

注目したのは
1933年に作られた映画を元にして
1976年にも一度、作られましたが
(このときは父親に連れられて見た記憶が懐かしいw…
なんとジェシカ・ラングとジェフ・ダニエルズの競演だったんですね。)
2005年に撮られた映画で三度目のリメイク作品、

とりわけ目をひくのはその時代背景を基にしたデザインです。

先日訪れた、東京都庭園美術館と同じ
アールデコを基調としたデザインで彩られています。


この映画の時代背景が1933年のニューヨークを舞台にしているところからです。
そしてキング・コングが最後によじのぼったビルが
エンパイア・ステート・ビル。
まさにこの時代のアール・デコ様式を代表するようなビルです。


庭園美術館へ行った後で
「アール・デコの館」という旧朝香宮邸を解説した本を読みました。

屋根にニラを植えたり、タンポポを生やしたり、
木の上の茶室を作ったりなど、おもしろい建築を手がける建築家
藤森照信が詳細な解説を書き
装丁デザインを私の尊敬するグラフィックデザイナー杉浦康平が手がけた
美しい写真集で定価は15000円という高額なもの。
今は文庫版でも出ていますが、
この本は1984年、
旧朝香宮邸(当時はプリンスホテルが所有する白金迎賓館)
のアール・デコ様式を再評価する気運の中で出版された本のようですが
その中では当然のことながら
1925年のパリ万国博、通称「アール・デコ博」についても
大きくスペースが割かれています。

実は、この万博には日本政府も参加していて
純日本風な数奇屋作りによる
「日本館」を出展しているのですが
そもそものこの博覧会のテーマは
「純現代的な傾向を呈する製品を算出するすべての工業に対して之を開催」し
「旧式の模写などは排斥」するというもの、
しかしその中で
あいもかわらず「外国に受けそうな」日本趣味のものだけを展示してしまった日本…。
(結局、当時の日本はそうするしかなかったのです。
しかし、そこで新しい工芸と出会い、それを持ち帰った技術者が
新しいデザインの作品を生み出すことになりました。)

一方、
このアール・デコ博にアメリカは出展を見合わせています。
いまだ、ヨーロッパの亜流・模倣の中でもがき格闘中で
新しいデザインを生み出せなかったからです。
しかし、アメリカ人たちは大挙してパリへ押しかけ
「新しいデザイン」を吸収して帰ったわけです。

というわけで、
その発祥の地、ヨーロッパ、とりわけフランスよりも
(ヨーロッパでは伝統を重んじるため結局アールデコ様式の建築はそれほど浸透しませんでした)
よりアール・デコ的なデザインをアメリカは推し進めたわけです。
あのニューヨークのスカイスクレーパーの多くに
アール・デコ的な意匠が取り入れられているのはそのためです。

アール・デコというのは
高級なもの、一点ものというよりも
大衆的なもの、大量生産される工業製品に多く取り入れられました。
そういったところも
新しい大量消費社会をめざしつつあったアメリカの雰囲気に合致したのでしょう。
伝統を重視するヨーロッパの邸宅などではなく
高層ビルにこそふさわしい。
また、当時の公共の建物、
駅などのデザインには部分的に
アール・デコデザインが取り入れられています。

…というわけで
あの白金の庭園美術館は
世界的にも珍しいアール・デコ調の
「個人の邸宅」なわけです。
あの屋敷の中の
ドアノブやシャンデリアなど
一見工業製品かと思わせるものでも
徹底的に凝っている、
まるで近代的で豪華なホテルの設備のようです。
まさに、
そこがパリで暮らした朝香宮夫妻(とくに夫人)の
目的としたところなんじゃないでしょうか…?
(いじのわるい見方をすればオフランス好きの西洋カブレ。)

さて映画のキング・コングにもどって、
1976年版のキング・コングは舞台を現代(1976年)に設定し、
古臭いアール・デコ調のエンパイアー・ステート・ビルではなく
(今は無き)世界貿易センタービルに昇ります。
そのときNYCで一番のノッポビルだったからです。

2005年の「キングコング」、
SFXバリバリでものすごいCGを駆使した
「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督の力作では
時代をまた1930年代に戻しました。
監督はこの企画を相当暖めてきたようですので
そういう時代背景も最初から決めていたのでしょう。
この時代のニューヨークは世界恐慌の中で
みな先行き不安な気持ちのなか、
それでも世界はいまだ未開の領域、未知な領域を持っていた…
そういう雰囲気、レトロフューチャーとでもいいましょうか?
時代背景があの映画に見事にピッタリでセンスの高さが伺えます。

タグ: デザイン, 映画の時間, 読書の時間

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