Home > アールプリモ日誌 > 噺家の遺言。

噺家の遺言。

01
21
2011年

丸の内オアゾの丸善に松岡正剛がプロデュースしたフロアがあります。

通常の本屋のディスプレイとは違う陳列をしているんですね。
松丸本舗

非常に面白い本屋なんですが

いつだったか、
私がお店にいったときは杉浦康平フェアをやっていて
グラフィックデザイナー杉浦康平氏が
装丁やデザインをした本とともに
すでに廃刊になったものなどもショーウィンドーに並んでいました。

その中の一冊、というかシリーズで
ヤゲンブラ選書という不思議な名前のシリーズ。
これも杉浦康平氏が手がけた仕事なんですね。
表紙の文字のレイアウト、
雑誌のように中身のトピックを抜き出して並べて
興味を惹かせる…
そして極め付きは文章の一部を傾かせる~地軸の傾き!W~
こういったところが杉浦デザインによる表紙の特長です。
(一時期、どうしたわけだか
 杉浦康平氏に非常に心酔していた時期があり
 講演なども聴きにいったこともあります。)

1980年前後に出たものばかり、
出版社には一応ラインナップされているのですが
文庫化したものがないとしたら恐らくほぼ廃刊でしょうね。

この中の一冊、
春風亭一柳著、
噺の咄の話のはなし

という本を読みました。

名前のとおり、噺家さんですがおそらく名前を知っておられる方は
ほぼいらっしゃらないでしょう。
昭和の名人と謳われた六代目三遊亭円生の三番弟子で
兄弟子に五代目円楽がいます。
名人円生は1978年、柳家小さんが会長をしていた日本落語協会を脱退、
一門の弟子たちで新団体落語三遊協会を立ち上げました。
わずかその一年後、円生は倒れて帰らぬ人に。
しかし、その分裂騒動の中、師匠に従わず落語協会に残り、
破門された弟子が二人いました。
そのうちの一人、三遊亭好生が師匠円生に破門され、
名前をとりあげられ、
新しくつけた名前が
春風亭一柳というわけです。

この中で一柳さんは
「師匠が死んで嬉しかった」
と冒頭に書いています。
その理由はいろいろあるのでしょうが
芸に惚れ抜いて弟子入りした
その師匠が死んで嬉しいともらしてしまう
この人の不幸な人生を思うと切ないものを感じます。

そして一柳さんはこの本を出して1年後の1981年
自宅である公団住宅から飛び降り自殺なさっています。
おそらくかなりノイローゼの深い状況で書かれた本なのでしょう。
全体が散漫で、
現在の心境を語るところも自分を励ましつつ、
今にもくずれおちそうな気分をたたえています。

しかし、そんな中でもなにやら冗談めいたことを
書こうと努力しているところが見受けられ
職業病っていうやつなのか、
業の深さを感じます。

ネットで一席だけ一柳師匠の噺は聞けるのですが
円生に似ていますね。
口演は残念ながらあまり面白みを感じられないのですが
この本はいろいろと考えさせられました。

タグ: デザイン, 読書の時間

関連する投稿

コメント数:0

コメントする
情報を保存しますか?

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://www.artprimo.net/2011/01/21/3977.html/trackback
リンクのないトラックバックは受信されません。
噺家の遺言。 from アールプリモ 文京区白山印刷グラフィックデザイン

Home > アールプリモ日誌 > 噺家の遺言。

検索
Feeds
Meta
印刷のご用命はアールプリモへ

トップへ戻る